MIDAS-GETSを利用した経済指標のナウキャスト

ナウキャストは近年、EViewsを利用した研究におけるポピュラーなテーマの一つになっています。ナウキャストにおける最も重要なテクニックが異なる頻度データを混合して推定する:MIDASです。このページではMIDAS推定の新しい手法、MIDAS-GETSとこれを利用した経済指標のナウキャストをご紹介します。
このページは、開発元のブログ:EViews econometric analysis insight blogを元に作成しています。

Graph animation

icon EUのデータを利用した例


MIDASと経済指標のナウキャスト

  • 一般的に、頻度の異なる系列を用いて推定を行う場合は、低い頻度に揃えてデータを変形しますが、これでは、高頻度系列に含まれる情報の多くが失われてしまいます。MIDASでは、高頻度系列を別々に独立変数としてモデルに加えることでこの問題に対処します。この手法はU-MIDASと呼ばれます。

MIDAS-GETS

このようなMIDAS法では、高頻度のリグレッサの数が大きくなり、推定式が飽和してしまいます。これに対して、従来のMIDASはより高い頻度の変数をより少ない数の係数にパラメータ化する、選択された重み付けスキームを利用します。最もポピュラーな加重方法はAlmon/PDL加重です。
EViews12ではMIDAS推定の新しい手法として、MIDAS-GETSをサポートしました。この手法では、加重を利用して変数の数を減らすのではなく、Auto-search/GETSを利用して変数を選択します。Auto-search/GETSはインジケータサチュレーションで使用されている機能なので、MIDAS-GETSでも同じくインジケータ選択を利用できます。

MIDASによるナウキャスト

MIDASは必ずしもナウキャストのツールとして導入されたわけではありませんが、ナウキャストへの適用性は明らかです。 従来のマクロ経済変数は通常、低頻度で遅延を伴って報告されますが、高頻度のデータはタイムリーに利用可能であり、低頻度の変数の現在の状態の推定に活用できます。
より具体的には、ユーロ圏のGDPを取り上げます。 この重要なマクロ変数は、ユーロスタットによって四半期ごとにリリースされます。通常、四半期が終了してから3か月後です。 したがって、7月末で、現在のGDPが何であるかを知りたい場合は、12月まで待って公式統計を受け取る必要があります。 ただし、月次、または日次の変数が遅滞なく利用できる場合があります。 それらの潜在的な対応物とは異なり、これらはGDPの現在の価値を即座に推定するために使用することができます。

ナウキャストツールとしてのPMI

ナウキャストで使用される最も一般的な変数は、経済調査により提供されるものです。 調査はほとんど遅れることなく高頻度でリリースされ、多くの場合、より伝統的なマクロ経済変数と高い相関関係があります。 ここでは、購買担当者景気指数(PMI)を例として取り上げます。 これは、民間企業の管理職への調査によって、毎月リリースされ、経済の現状を反映していると思われ、かつ調査からリリースまでの遅延はほとんどありません。以下のグラフのように、ユーロ圏ではPMIとGDPの成長が一貫して高い相関関係を示していることがわかります。

データベース接続

ナウキャストの実行例

  • MIDASを利用したGDPのナウキャストの例として3つモデルを紹介します。サンプルデータはこちらからダウンロードできます。GDPGRはEUの四半期GDP成長率、PMICMPEMUは月次のPMIです。

MIDAS-PDL

  1. 最初に最もポピュラーなAlmon/PDL加重を使用したMIDAS予測を紹介します。Quick > Estimate Equationと操作して、MethodにMIDASを選択します。テキストボックスでGDPGR C GDPGR(-1)と入力して、独立変数としてをラグ付き従属変数と定数項を指定します。
  2. High frequency regressorsMonthly\PMICMPEMU(-1)と入力して月次の系列を指定します。ここでの(-1)は、四半期の2番目までのデータを使用することを示します。Lags欄を12に変更します。ここまでで、ダイアログは次のようになります。
    データベース接続
  3. 最後に、Sampleで推定サンプルを2008q1 2018q1として、OKをクリックし推定します。
    データベース接続
  4. 推定ができたら、予測を行います。まず、Forecastボタンクリックして、Forecastダイアログボックスを呼び出します。
  5. ナウキャストですので、2019Q1の値について予測します。Forecast sample2019Q1 2019Q1に変更、予測した系列の名前をGDP_PDLとして、OKをクリックします。
    データベース接続
  6. 予測値と現実値をグラフで比較してみます。あくまで操作例ですので、結果については深く言及しません。
    データベース接続

MIDAS-GETS

  1. MIDAS-GETSでは加重を自動選択します。自動選択: GETSの詳細は、こちらの技術情報ページをご覧ください。まずは、上記のMIDAS-PDLの1.-3.と同じく操作します。
  2. Optionタブを開き、MIDAS WeightsAuto/GETSを選択し、OKをクリックします。
    オプション設定
    オプション設定
  3. やはり同じように、Forecastボタンから2019Q1について予測を行います。操作はMIDAS-PDLの4.-5.と同様です。次のように結果が表示されます。
    オプション設定

インジケータサチュレーションを伴うMIDAS-GETS

  1. 最後にインジケータサチュレーションを伴うMIDASA-GETSを紹介します。これにより、方程式の外れ値と構造変化が自動的にモデル化されます。先のMIDAS-PDLの1.-3.と同じく操作して、推定モデルを同様に設定します。
  2. Optionタブを開いて、MIDAS WeightsAuto/GETSを選択し、Optionボタンをクリックします。Include IndicatorsImpulse (IIS)にチェックします。
    オプション設定
    オプション設定
  3. やはり同じように、Forecastボタンから2019Q1について予測を行います。操作はMIDAS-PDLの4から5と同様です。次のように結果が表示されます。
    オプション設定

ナウキャストの評価

  • EViewsの予測評価機能を利用して、これまで紹介した3つのナウキャストの予測能力を比較します。

  1. まず、これまで紹介した3つのモデルを使用して、1期ずつ移動して推定とナウキャスト(予測)を繰り返します。予測期間は2019Q1から2020Q4です。ここでは、上記の3つに加え、1期のARモデルをEQ_SIMPLEという名前で追加して、計4モデルを比較します。プログラムで行う場合は、次のようになります。
  2. 次に、独立変数GDRGRを開き、Views > Forecast Evaluation...を選択し、予測評価ダイアログを開きます。Forecast data objectsに予測した4つの系列、GDP_PDL GDP_GETS GDP_GETSIS GDP_SIMPLEを入力して、OKをクリックします。
    データベース接続
  3. 比較結果が表示されます。Evaluation Statisticsからは、この例においては、GETSを使用したMIDAS-GETSとインジケータサチュレーションを加えた、MIDAS-GETSが支持されていることがわかります。
    データベース接続
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